2016年2月9日

A 構造を持つ超弦の場の理論の完全な作用の構成

Ted Erler, 研究室の修士課程2年の大学院生である竹嵜君との論文 arXiv:1602.02582 "Complete Action for Open Superstring Field Theory with Cyclic A Structure structure" が完成しました。

国友さんとの論文でフェルミオンを記述する Ramond sector を含めた open superstring field theory の完全な action を構成しましたが、Ramond sector の状態空間の取り扱いを工夫したところがゲージ不変な action を構成する上で重要でした。また、ボソンを記述する Neveu-Schwarz sector に関しては Wess-Zumino-Witen 型の定式化で重要な役割を果たす string field を採用することで、相互作用を closed form で書き表すことに成功しました。その一方で、弦の場の理論を構成する上での指導原理であるゲージ不変性にどのように弦の世界面の構造が反映されているかをあぶり出すためには、開弦の場合は A structure とよばれる数学的な構造が重要で、今回の論文では国友さんとの論文での Ramond sector の取り扱いと Erler, Konopka, Sachs が発展させてきた A structure を持つ弦の場の理論の構成方法を組み合わせることで、A structure を持つ open superstring field theory の完全な action の構成に成功しました。また、今回の action と国友さんと構成した action の等価性も示しました。

弦の場の理論ではゲージ変換の構造が複雑なので、量子的な効果を調べる上でのゲージ固定が技術的に困難であることがあり、実際、Wess-Zumino-Witen 型の定式化では今のところうまくゲージ固定ができていません。しかし、弦の世界面の構造の再現と密接に関係する A structure を持つ場合は、ゲージ固定を容易に遂行することができます。ボソニックな弦理論ではタキオンが含まれているので量子化は形式的なものにならざるを得ず、今回、タキオンを含まない超弦の場の理論で A structure を持つ完全な action が構成できたことで、弦の場の理論の枠組みで初めて量子的な効果を調べる準備ができたと言えます。

その一方で、Erler, Konopka, Sachs が発展させてきた手法で構成した理論では相互作用を具体的に書き表そうとするととても煩雑で、closed form で美しく相互作用が表現されている Wess-Zumino-Witten 型の定式化の方がはるかに扱いやすい理論です。両者の関係をより深く理解することが今後の重要な方向性であると思います。

ちなみに国友さんとの論文は Progress of Theoretical and Experimental Physics (PTEP) という雑誌に発表しましたが、その際にタイトルを少し変更して "Complete action for open superstring field theory" にしました。

2016年2月2日

基研共同利用運営委員会

1月21日の木曜日には京都大学基礎物理学研究所(基研)での共同利用運営委員会に出席しました。私は素粒子論グループの選挙で選出され、2015年の1月から基研の共同利用運営委員会の委員を務めています。さらに委員の互選で議長団の一員を務めることになり、これまでに2015年1月22日と23日の2日間に開催された委員会と、2015年7月13日の委員会、そして2016年1月21日の委員会に出席しました。

今回は共同利用運営委員会の委員として基研での研究会などの研究計画提案を審査する側であると同時に、弦理論や場の理論の分野での研究会の世話人として研究計画提案説明も行い、無事に採択されました。弦理論や場の理論の分野の基研研究会は例年夏に開催していますが、昨年は基研側の事情で夏に開催することができず、11月に開催しました。そのため、授業などの関係で参加できなかった方々や京都でのホテルの予約が難しかった方々がいらっしゃいましたが、今年は例年通り夏に開催できる見込みです。

2016年1月31日

日本大学でのセミナー

1月13日の水曜日には日本大学素粒子論研究室にうかがい、"Complete action of open superstring field theory" というタイトルで国友さんとの論文に関するセミナーをしました。前回、日本大学素粒子論研究室でセミナーをさせて頂いたのは、調べてみたところ2009年の5月で、駿河台キャンパスにある日本大学理工学部にうかがったのはそのとき以来でした。11月に国立台湾大学でセミナーをさせて頂いたときに稲見さんの健在ぶりについて書きましたが、日大でのセミナーのときには私が大学院生の頃にお世話になった藤川さんが元気にたくさん質問をして下さいました。藤川さんは私の博士学位論文の審査もして下さったのですが、そのときの話題も出て懐かしかったです。藤川さんだけではなく、大勢の方々がセミナーに参加して下さり、活発に議論をして頂きありがとうございました。以前に学振の PD として駒場にいらっしゃった三輪君とも久しぶりに会うことができて良かったです。

2016年1月1日

新年を迎えて

新年を迎えました。昨年は国友さんとの論文でフェルミオンを記述する Ramond sector を含めた open superstring field theory の完全な action を構成することができました。これは弦の場の理論の研究における悲願の達成でしたが、同時に出発点でもあり、実際、国友さんと論文を発表したあとでその内容を私自身がより深く理解しよう試みる過程でいろいろと新たなことが分かってきました。今年はそれを共同研究者のみなさんとさらに突き進めて行きたいと思っています。

今は弦の場の理論の研究で具体的にできることがたくさんありますが、このような状況だからこそ未完成な理論である弦理論の真の姿により直接的に迫るような研究への意識も大切にして行きたいと思っています。

2015年12月29日

小松君が井上研究奨励賞を受賞!

駒場素粒子論研究室出身でカナダの Perimeter Institute で postdoc をしている小松君が、優れた博士論文を提出した若手研究者に対して与えられる井上研究奨励賞(第32回)を受賞することが決定しました。おめでとうございます!

2015年11月30日

台湾でのセミナー

木曜日に台湾から帰国しました。11月23日には新竹にある国立精華大学で "Complete action of open superstring field theory" というタイトルでセミナーをして、11月25日には台北にある国立台湾大学で "Construction of open superstring field theory including the Neveu-Schwarz sector and the Ramond sector" というタイトルでセミナーをしました。

国立清華大学でのセミナーのあとは、Chong-Sun Chu と小山さんを含む postdoc の方々と夕食に行きました。Chong-Sun Chu とは、ずっと前に私が非可換幾何学に基づくゲージ理論の研究をしていた頃に何回かお会いした記憶がありました。私は正確にどこでお会いしたかは思い出せなかったのですが、Chong-Sun Chu が2000年に KIAS で開催された workshop で会ったことを思い出し、そのときのエピソードまで話してくれて懐かしかったです。Chong-Sun Chu は、今は National Center for Theoretical Sciences の Physics Division の director を務めていらっしゃるそうです。Chong-Sun Chu は香港出身で、夕食は香港のスタイルのレストランでした。レストランまでタクシーに乗って新竹の住宅地を通って行ったのですが、私が子供だった頃の東京の風景と似ていたことが印象的でした。

国立台湾大学を訪問するのは2回目で、パスポートのスタンプを見ると前回は2009年の6月だったようです。そのときのセミナーでは、台湾の各地から日本人の postdoc が大勢集まって驚いた記憶があります。今回も日本人では稲見さん、細道さん、国立台湾大学の postdoc の岡崎さんがいらっしゃり、今後も良い研究交流が続いて行くと素晴らしいですね。稲見さんが中国語を話して学部学生や大学院生と交流して慕われていらっしゃることが印象的で、そのような教育の姿勢を見習いたいと思いました。

前回の滞在でも台湾のおいしい食事を満喫しましたが、今回の滞在でもすべての食事がおいしく、何度か食べ過ぎてしまったことが反省点です。

2015年11月22日

島田君と小松君の滞在・台湾へ出発

駒場素粒子論研究室出身の島田君と小松君が基研研究会の前後の週に駒場に滞在していて、駒場素粒子論研究室は活気に満ちていました。島田君は岡山光量子科学研究所の研究員で、11月18日にセミナーをして頂きました。小松君はカナダの Perimeter Institute の postdoc で、11月4日にセミナーをして頂きました。私にとっても string field theory 以外のことをたくさん議論することができて有益でしたし、研究室の大学院生にとっても良い刺激になったことと思います。

私は島田君や小松君が帰るよりも一足早く、今日、台湾の新竹に移動しました。国立清華大学にある National Center for Theoretical Sciences の postdoc である小山さんが小籠包のおいしい店を案内して下さり、台湾のビールも飲んで夕食を楽しみました。明日、国立清華大学でセミナーをさせて頂き、その後、台北に移動して11月25日には国立台湾大学でセミナーをさせて頂きます。

2015年11月12日

基研研究会での talk

京都大学基礎物理学研究所(基研)での弦理論と場の理論の研究会 "Developments in String Theory and Quantum Field Theory" で、"Complete action of open superstring field theory" というタイトルで talk をしました。国友さんとの論文についての talk は今日が初めてで、今回は20分間の talk でしたが、再来週は台湾の国立清華大学と国立台湾大学でセミナーをさせて頂くことになっています。研究会は明日までですが、私は東京で用事があるため明日は参加することができず、今日の最後のセッションのあとで帰路に就きました。

2015年11月9日

基研研究会

今日から始まった京都大学基礎物理学研究所(基研)での弦理論と場の理論の研究会 "Developments in String Theory and Quantum Field Theory" に参加しています。夕食はニューヨーク州立大学 Stony Brook 校の Leonardo Rastelli と駒場素粒子論研究室出身でカナダの Perimeter Institute で postdoc をしている小松君と食べに行きましたが、早速議論が盛り上がって楽しかったです。

2015年11月9日

3ヶ月ぶりのホームページの更新

前回、2ヶ月以上もホームページを更新しなかったのですが、さらに悪化して今回は3ヶ月以上もホームページを更新していませんでした。前回書きましたように、今まで8月や9月に行っていたことを今年は7月に実施したため、8月はここぞとばかりに研究に集中していました。そのしわ寄せで9月からは忙しくなってしまい、今に至っています。ホームページに書くことはたくさんありますので、これからは少しずつでも書いて行きたいと思っています。