2017年4月18日
基研での国際研究会 "Quantum Gravity, String Theory and Holography"
4月3日と4日は京都大学基礎物理学研究所(基研)での国際研究会 "
Quantum Gravity, String Theory and Holography" に参加し、研究会の初日である4月3日に "Complete formulations of superstring field theory" というタイトルで talk をしました。
基研には頻繁に行っていますが、酷暑の夏に行くことが多く、今回は素晴らしい季節に行くことができて良かったです。私は他の予定があって4月3日と4日しか滞在できず、素晴らしいプログラムの研究会でしたが、後半に参加できず残念でした。今年は京都の桜の開花が遅めだったので、私の滞在中には満開の桜のお花見というわけには行きませんでしたが、この時期ならではの京都の雰囲気を楽しむことができました。
2017年3月28日
大森君との論文
東京大学の本郷キャンパスの素粒子論研究室で博士の学位を取り、昨年の9月からアメリカの Institute for Advanced Study (IAS) で postdoc をしている大森君との論文 "Open superstring field theory based on the supermoduli space" が完成し、昨日
arXiv:1703.08214 として発表しました。
超弦の場の理論を構成する上で superconformal ghost sector をどのように取り扱うかが難しいところで、最近の進展では最終的に small Hilbert space で記述する場合でも途中の段階で large Hilbert space をかなり本質的に使っています。しかし、large Hilber space を使うと超リーマン面の超モジュライ空間との関係が分かりにくくなってしまうので、今回の大森君との論文では large Hilbert space を一切使わずに超リーマン面の超モジュライ空間との関係に基づいて超弦の場の理論を構成する方法を発展させ、具体的に open superstring field theory の Neveu-Schwarz sector の3次と4次の相互作用を構成しました。
しかし、私たちの構成法の方が優れているという主張をしているわけではなく、むしろ small Hilbert space を使うアプローチと large Hilbert space を使うアプローチを切り分けることで、なぜ large Hilbert space を使うといろいろなことが奇跡的にうまく行くのかということの理解につなげたいと考えています。
2017年3月20日
日本物理学会の論文賞表彰式
昨日は大阪大学豊中キャンパスでの日本物理学会第72回年次大会の期間中に池田市民文化会館アゼリアホールで開催された第22回日本物理学会論文賞表彰式に国友さんとともに出席し、賞状を頂きました。
私は東京大学で博士の学位を取得したあと、カリフォルニア工科大学で postdoc をするまでの短い期間ではありましたが日本学術振興会特別研究員−PD として大阪大学で研究に従事していました。今回はそのときに住んでいたところの近所の池田市民文化会館アゼリアホールでの表彰式ということで良い思い出になりました。また、カリフォルニア工科大学でお世話になった大栗さんが表彰式のあとで総合講演をされ、アメリカに出発する前に大阪で過ごしていたときの気持ちをもう一度思い出して研究に励みたいと思いを新たにしました。
2017年2月28日
2017年2月16日
大学院入試および大学院入試説明会の日程
駒場素粒子論研究室の大学院生になるためには、東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻の修士課程の入学試験を受験する必要があります。2015年から大学院入試の日程が早まり、今年の日程は以下の通りです。募集要項は3月24日から配布します。
修士課程入学試験
出願期間 2017年6月13日(火)〜 6月19日(月)
筆記試験 2017年7月22日(土)
口述試験 2017年8月1日(火)〜 8月3日(木)
大学院入試説明会の日程は以下の通りです。詳細は
こちらをご覧下さい。
広域科学専攻大学院入試説明会
第1回 2017年4月22日(土) 13:00 〜
第2回 2017年5月27日(土) 13:00 〜
駒場素粒子論研究室に興味のある方は、
こちらよりお問い合わせ下さい。
2017年1月1日
新年を迎えて
新年を迎えました。私自身も駒場素粒子論研究室の出身ですが、昨年を振り返って私にとって比較的重大であった事件は、私が大学院生の頃から駒場素粒子論研究室の大学院生が引き継いできたものが7月に廃棄されたことです。私としては祖父からの形見が捨てられてしまったような気持ちでしたが、今は教員の立場であり、大学院生が引き継ぐものとしての存在価値が既に失われていたことは明らかです。私にとって駒場素粒子論研究室は大切で、駒場素粒子論研究室とは何なのかと毎日のように問いかけているように思いますが、時代とともに変わって行くべきもの、時代が変わっても守り続けるもの、その振り分けの迷いを断ち切るきっかけとなる事件であったように思います。今、何をするべきなのか、新年を迎えての私の思いは1年前とは違っていますが、一歩一歩進んで行きたいと思います。
2016年12月14日
台湾に到着
ホームページのニュースの欄に書くことがいろいろとあるのですが、更新が滞っています。実は今日、台湾に到着しました。今回の滞在のことも、後々ホームページのニュースに書こうと思います。ちょうど1年ぐらい前に台湾に来たのですが、気候がどうだったかなど、忘れてしまっていました。昨年は新竹の国立清華大学と台北の国立台湾大学でセミナーをさせて頂きましたが、今回は新竹の国立交通大学に滞在します。
2016年11月13日
鈴木さんの集中講義
11月8日から10日まで、九州大学の鈴木博さんに「グラディエント・フローとその格子ゲージ理論への応用」というタイトルで集中講義をして頂きました。集中講義のテーマである gradient flow というのは、Euclid 空間上の場についての仮想的な時間 t に関する1階の微分方程式で、熱伝導方程式に似た構造を持っています。t=0 での場を初期条件として与えて有限の t での場を求めると、t=0 での場についての nonlocal な composite operator になりますが、量子化したときに理論の coupling constant などの繰り込みだけで有限になり、通常の composite operator を定義する際の繰り込みの手続きが必要ではないという著しい性質を持ちます。有限の t での場は繰り込みの処方に依存しないので、例えば dimensional regularization での energy-momentum tensor と有限の t での場の対応を調べることで lattice regularization での energy-momentum tensor を構成するなどの応用があります。
Wilson 流の繰り込み群の flow と gradient flow は似ているところもあるので、もしも物理的に関係付くと面白いと思います。弦の場の理論では相互作用項を定義するときの conformal 変換に由来する conformal factor から相互作用項が nonlocal になり、そのせいでループ積分での短距離の発散がなくなっていますが、この機構が gradienet flow のような観点で捉えられたら面白いかもしれません。最近の Sen の超弦の場の理論での Wilsonian effective action に関する
論文は、この nonlocal な相互作用項の変形と Wilson 流の繰り込み群を関連付けるものですが、もしも gradient flow と関係があれば t の値を変える変形に対応します。
9日の夜は、鈴木さんと研究室のメンバーで渋谷の
びいどろというスペイン料理の店に飲みに行きました。以前から行きたかった店で、この機会にみんなで行くことができて良かったです。
2016年9月26日
永野君が原子核三者若手夏の学校の優秀発表者賞を受賞!
今日から新学期が始まりました。東京大学では昨年度に学事暦が変更になり、今年度はさらに少し変更が加わったので、私自身もリズムがつかめないでいます。さて、休みの間のニュースで重要なことを書き忘れていました。駒場素粒子論研究室の修士課程1年の永野君が
原子核三者若手夏の学校で「ラージ N 極限」というタイトルの発表をして、優秀発表者賞を受賞しました。永野君、おめでとうございます!
2016年9月2日
数理科学
私が「超弦理論と摂動論」というタイトルで書いた記事が掲載された雑誌「
数理科学」の2016年9月号「特集 摂動論を考える」が発行されました。私は東京大学の駒場キャンパスで大学1年生や2年生を対象とした授業をすることが多いのですが、超弦理論の宣伝も兼ねてニュートン力学から超弦理論までの現代の物理学の構造を説明し、授業の科目のその中での位置付けを理解してもらうようにしています。そのような文脈で超弦理論に関する質問を受けたり、6月の「梶田隆章教授 ノーベル賞受賞記念講演会・交流会」でも重力波のことや超弦理論のことを学生のみなさんと話したりしていたせいか、そのような側面が色濃く反映された記事になっているように思います。もっと超弦理論の専門的なことに重点をおいて説明した方が良かったかもしれませんが、超弦理論とはどんな理論なのか、素朴に興味のある方は機会があったらぜひ読んでみて下さい。